前回のコラムでは、金融商品のもつリスクとリターンについてお話をしました。

リスクとは、予想されるリターンのぶれ幅のことでしたね。ハイリスク・ハイリターンの投資とは、大きな儲けがでる可能性がある一方で、大きな損をする可能性もある投資です。つまり、ふれ幅の大きい投資のことでした。

資産運用の基本は、このリスク(ふれ幅)を安定させながらお金を増やすことです。例えば老後のための大事な資金が予想の半分になってしまった、なんていう事態は誰だって避けたいものです。

予想されるリターンのブレを小さくするためのテクニックとして、分散投資という考え方があります。

これはリスクを小さくするためにポートフォリオを組んで投資を行うというものです。今回のコラムではこの分散投資についてお話ししたいと思います。

分散投資とは ―なぜ分散させるのかー

英語のことわざに、Don’t put all your eggs in one basket というものがあります。

直訳すると、「全ての卵をひとつのカゴに入れるな」です。持っている卵を全て同じカゴに入れていたら、そのカゴを落としてしまったら卵は全部われてしまいます。しかし、いくつかのカゴに分けておけば、ひとつのカゴを落としても他のカゴに入っていた卵は無事です。全てを失うという惨事はまぬがれます。

これがポートフォリオの基本的な考え方です。

複数の金融商品を購入するなら、同じものではなく、例えば株式と債券のように、値動きの異なる種類の商品を購入します。それにより保有資産の全てが一度に値下がりするリスクをおさえることができます。

金融市場に何か大きな動きがあったときに、それに対して同じ値動きをしない資産を組み合わせて保有し、資産全体でリスク管理を行うことを「分散投資」と呼びます。

では、分散投資のテクニックを具体的にみてみましょう。

運用資産の分散

まずは、投資対象を分散させる方法があります。

金融商品には、株式・債券・不動産・コモディティ(金や原油など)、現預金などがあります。経済動向に対して異なる値動きをするものを組み合わせることで資産全体のリスク軽減を図ります。先ほどの例にそって言うと、卵(投資資金)は、株のバスケット、債券のバスケット、などいくつかの異なるバスケットに分けて入れるイメージです。

前回のコラムで「価格変動リスク」のお話をしました。一般的には株式と債券や、株式と金などが反対の値動きをすると言われています。

例えば、景気が悪くなって金利が下がると、市場に出回っている債権の価格は相対的に上昇します。一方で、景気悪化は株価の下落につながります。このように値動きの相関の低い金融商品を組み合わせて保有することでリスクヘッジを強化することができます。

また同じ投資カテゴリーの中でも細かく分散させることもできます。例えば、株式であれば異なる業種、例えばテクノロジーと食品など、値動きの相関の低い企業を複数選択して投資することで、分散の効果を期待することができます。

次に、投資対象の地域を分散させることもできます。

金融のグローバル化のおかげで日本にいながらにして世界各国の資産に投資することが可能になりました。同一資産への投資でも複数の地域のものを組み合わせることで(株式投資なら国内株と外国株のように)、リスクを分散させることができます。

リーマンショックのときのように、稀に世界中の金融マーケットが同時に似た動きをすることもありますが、先進国と途上国のように異なる状況下にある国や地域を選んで資産を分散させることもできます。

投資時期の分散とリバランス

2つ目の分散のテクニックとして、時間を分散させる方法があります。

前回のリスクのお話でも少しふれましたが、投資するタイミングを複数回にわけることです。

投資を行うときには誰だって安いときに買って高く売りたいものです。しかし、一度にまとめて投資すると、購入したあとに価格が下落するリスクが大きくなります。

このリスクを小さくするために、一定の額をマーケットの動きを考慮しないで定期的に購入する方法(ドル・コスト平均法)があります。長期に渡って少額の投資金を積立てていくイメージです。

この方法で投資を行うと、価格が高い時期には少なく、価格が低い時期には多くの数量を購入することになります。そのため長い目で見て平均購入単価を低くおさえることができるのです。急な値下がりがあっても、価格の低いときに購入した分による利益がカバーしてくれるので多くの損失を出さずに済みます。

長期投資を行ううえで、もう一つの重要なポイントはリバランス(資産配分の再調整)です。

運用資産をうまく分散させてポートフォリオを組んでいても、長期間保有しているとマーケットの動きによって値上がりする資産と値下がりする資産がでてきます。その結果、資産配分が当初の予定から大きく変わってしまい、気づかない間に大きなリスクをとっている、という状態にもなりえます。

例えば、比較的値動きの少ない企業A社の株を7割、比較的値動きの大きい企業B社の株を3割、というバランスで保有していたとします。保有しているあいだにA社の株が値下がりしてB社の株が値上がりすると、資産配分が変わり保有資産の半分以上を値動きの大きいB社の株が占めるということになります。

値動きの激しい株を多くもつということは、将来的に大きな収益が出る可能性がある一方で、大きな損失が出てしまう可能性もあります。前回お話したハイリスク・ハイリターンの投資ですね。

そこで、値上がりした企業Bの株を売って、値下がりした企業Aの株を買い足すことで投資配分を最初の比率に戻す(リスクを想定内に戻す)という作業がリバランスです。

リバランスの方法としては半年ごとなど期間を定めてに配分を見直す「定期型」と、当初の配分から一定のずれが生じたら配分を見直す「乖離型」の2種類が代表的です。

リバランスを行うと、価格が高いときに売却して安いときに購入することになるので、収益アップにもつながります。一方で、資産を長期運用していると、環境の変化に伴いとれるリスクの大きさに変化が出てくることもあります。

必要に応じてリバランスを行うことで、ライフステージにあった適切な投資を行うことが可能になります。

最後に

今回は資産形成における「分散」についてお話をしました。複数の資産を組み合わせてポートフォリオを組んで投資を行うことや、投資する時期を分けることで、資産全体の価値が大きく下落するリスクを抑えることができるということ、ご理解いただけたかと思います。

また、人生における様々なステージの中で余裕資金の大きさや、その資金を使うタイミングにも変化がでてきます。

かしこく長期運用するためには、ポートフォリオを一度組んだのちにそのまま放置するのではなく、定期的にメンテナンスすることが重要になってきます。ご自身でとれるリスクの大きさを状況に応じてしっかり把握し、リスクをおさえながら安定してお金を増やすことを目指していただければと思います。